静謐で力強くて少し綺麗な喪失と再生 よしもとばなな『ハードボイルド/ハードラック』
こんにちは、Mistirです。
読書録13
よしもとばなな『ハードボイルド/ハードラック』
実は、よしもとばななの作品を初めて読んだ。
で、感想から言うと……
「好きか嫌いかで言えば割と好き、スゲーと思う作品、だけど妙に合わない」
って感じ。
なんだろね。淡々と、かつ力強く喪失と再生を描く物語なんだけど、「技巧的に、技巧的な表現を避けている」感じが凄い。
彼女は強い人だった。こわいものがない人だった。
なかなかこんなサバサバした書き方ってできないよなぁ。
ポエムっぽくなるかならないかの絶妙なラインをスイスイ走ってる感じ。……なお、ポエムになるならないのラインじゃなくてもういろいろ開き直ったのが村上春樹である。
で。
ストーリーなんだけど、これはあまり言う必要がないかなって思う。
大したストーリーじゃない、正直。
ストーリーの深さは問題じゃない。
この小説で見るべき点は「喪失と再生」っていう一点に尽きるんだろうけど。
多分、合わないとしたらその「再生」が妙に合理的なところなんだろうな。
なんつーかさ。じっくりと「死」の喪失から再生していく、その流れが描かれてるわけだけどさ。
でも妙にね。
……綺麗、なんだ。
その「綺麗」さ、「清潔さ」は、本当に素晴らしいと思う。
けどさ。
……綺麗すぎんだよなぁ。僕には。
僕はやっぱり夜の新橋で雑に酒飲んでるくらいがちょうどいいのさ。
っていう。そういう男なんだよ。
そういう、「男」なんだよ。
やっぱさぁ。
この小説の「綺麗さ」、女性的だよ。すごく。
女性作家だから、とかそういうのじゃなくて。綺麗すぎるんだ。
言葉の美しさ。
情景の美しさ。
確かに、この小説はずば抜けてる。
でも僕はさ、ド汚いところでふっと見える綺麗なシーンが好きでさ。
ま、そういう話はまた別のところでしよう。
うん。
清涼で美しい小説ですよ。
でもやっぱり、僕は汚いほうが好きだなあ。
よしもとさんごめん。
ファンの皆さんもごめん。
ではまた。