Mistir Library

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中村淳彦『ルポ 中年童貞』ーー中年童貞の悲劇と、悲劇を眺める「僕らの姿」を読む

こんにちは、Mistirです。
読書録その8

中村淳彦『ルポ 中年童貞』

TwitterのフォロワーであるTさんにオススメ頂いた本です。

僕は基本、オススメ頂いたら読むようにしてます。

……だがTさん、僕に何故これを勧めたッ!

……深くは言わないですが、僕は中年童貞」ではないです。
それだけ言っておきます。「中年童貞」ではないです。

この本は色々思うんだけど。
少し「自分より明らかに下の人を見下し、安心感を得るための本」になっちゃってる気はして。

だけど、「そうじゃないとするならば、『どういった視点から』この書物を読むべきなのか?」っていう疑問は残る。

例えば、この本の後半には「性の問題を解決する」ことを目的とした組織であるホワイトハンズという団体の具体例が書かれている。
この団体は「見合い」や「夜這い」というような文化が消え、過度に「自己責任」と化した恋愛と性の問題を見つめ、物凄い方法で解決を測ろうとしてる団体だ。

具体的に本の中に書かれてるんだけど、「童貞と処女を集めて卒業させる企画」とかやって大炎上したらしい。そりゃそうや……とは思うものの、本書を読んで主張を聞く限り、滅茶苦茶真っ当なことを言ってるように聞こえてくる。この辺りは是非読んでみてね。

で、読者である「僕ら」は、「マジやべえ」とは思うものの、「どうこうしよう」とは思わないのではないか。この「ホワイトハンズ」という団体のように
……この本を読んで、何を思えばいい?

まー、この辺りは「歴史問題の本を読もうと何もできない」のと同じように、問題を把握することそのものに意味があるのかもしれないけどさ。

一応、「自分より明らかに下の人を見下し、安心感を得る」っていう読み方に関して言うとさ……

 

わりと本気で仕事辞めて図書館でひたすら読書して生きようかとかたまに思う社会人だったんだけど……


会社辞めるのやめようと思いました。
コワイコワイ。ホントに。怖くなりました。
辞めた末路が、本書で紹介されてるような人たちだと考えると……怖くなります。

これって確かに「下を見てる」わけだけど。
僕は普段からわりと「下見るって大事だぜ」って言ってます。
リアルでもたまに言ってます。

 

 

有吉弘行が『お前なんかもう死んでいる』という本で「上見るな!!!」ってことを散々語ってるんだけど、僕が言う「下を見ろ」は似た部分もあるけど違う部分もある。

僕が「下見たほうが良い」って言うと、みんな「いや、上見たほうがいいでしょ」って言うんです。

で、僕はニヤニヤしながら言うんですよ。

「上、つまり『デキる人』とか『上手い人』とか、そういう人は『何がデキるのか』とか『何が上手いのか』ってわからないでしょ?例えば、『あの人仕事できるな』って思った時、『どこが凄いんだ?』って普通分からないし、分かったとしてもマネできないじゃん。でも、『あの人マジで無能!』って思ったとき、『何がダメなのか』って考えるのは簡単だし、自分が『ダメなことをしないようにする』のも比較的簡単でしょ?そう考えたほうが楽だし効率的なんだよ」

こう言うと、納得してもらえることが多い。

ってことで僕は「下を見る」ことを一つの方法論として実践してる……わけなんだけど、やっぱり性格悪いよなぁ我ながらw

まあ本筋とは外れたけど、読書の楽しみ方なんて100人いれば100パターンあるべきだから、そういう「下を見て安心するだけ」っていう本の楽しみ方も「誰も咎めることはできない」のではないかな。

……で。
ふと、ぞっとするんですよね。
「そうやって誰かを下に見てる僕は」
「誰かを下に見る人間は」
「いつでも、下になる可能性がある」
「というか、そもそも……」

『自分が下じゃないなんて、いつから勘違いしてた?』

軽くホラーですね。
人を呪わば穴二つ、人を見下せば人から見下されます。

まあ僕が言う「上下」っていうのは、例えば「人前で話すのが上手い、下手」みたいなわりと明確に分かるものだけの話です。人前でお葬式みたいなスピーチする人、たまにいるからね。

人間性の上下とか、そういうことは考えただけで不幸になっちゃうから考えないです。
……ま、まぁこの本はその「人間性の上下」をモロに語っちゃってるんだけど……
それは置いといて。

純粋に読み物として考えると面白いけどさ。

あと、筆者の中村氏もどちらかというと「中年童貞」や「非リア充」寄りのメンタルをきっちり持ってらっしゃる方なのかなぁ、と思った。
この本には「弱者をいじめる」意図はあまり感じない。マスコミがたまにオタクを動物扱いするような「いじめ」の意図は見えなかった。

それでも、どうしても「人格に起因する問題」を描く以上は「偏った」ものになっちゃうわけで、ある程度は仕方ないかもしれない。
特に同書が書かれるきっかけとなった第六章なんて、もう完全に筆者の「愚痴」を感じる。そんな人間おらんやろ!と言いたくなる具体例が書かれている。


僕は、それを読んで何を思えば良いか分らなかった。
やっぱり、「どの」視点で読めばいい?

あとは……僕の感覚的な問題だけど。
「運が悪かった」というそれだけの理由で「中年童貞」になった人も滅茶苦茶いるんじゃね?と思うんだよね。
この本で書かれてるのは「そりゃ彼女どころじゃないわ」みたいな例ばかりだからさ。もっと「悲劇でないがゆえの悲劇」というかさ、「普通の人が彼女できない悲劇」みたいなのってあると思うんですよ。
まあこの筆者も「インタビューするのめっちゃ困る。『童貞ですか?』って聞くのもはばかられるし、普通それでインタビュー受けてくれないし」みたいなこと言ってるから、この辺りはこれからもっと追求するのかもしれない。
やっぱり、問題の捉え方は滅茶苦茶面白いんだけど、「偏ってる」感が拭えないんだよなぁ。

仕方ないんだけどね。

単純に面白い本なので、読んでもいいかもしれません。
とりわけ、「現代の恋愛が過剰な自己責任によって成り立っている。しかもその歴史は全然長くない」っていう観点や、介護事業がいかに歪なものになったか分析されてる過程は凄く面白かった。……それを真に受けて良いかどうかは別だけど……そして、真に受けられないのに楽しめるってことは逆に言えば面白けりゃなんでもいいってことになっちゃうけど……

ああ複雑だなぁもう。
複雑すぎて、とっても歯切れの悪い記事になっちゃったじゃないか!
……もう面倒だ!

「社会人も悪くない」って思える本なので読むといいと思うよ!
これで終わり!!!
またね!!!

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