Mistir Library

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デール・カーネギー『道は開ける』ーー自己啓発の「聖域」を読む

こんにちは、Mistirです。
読書録その5。

デール・カーネギー『道は開ける』

どこかの7つの習慣と同じく、神格化されてる自己啓発本ですね。

ちなみに7つの習慣はコンプリートすると龍を召喚できるそうです。
嘘です。

さてさて。こちら、『道は開ける』ですが……
読んでから知ったんですけど、作者のデールさん、鉄道王のアンドリューさんとは別人なんすね。どうでもいいいけど。

どうでもいいことは置いといて。
うん、ぶっちゃけ「すごい本」ではあるんですよ、間違いなく。


あらゆる「自己啓発本」が陥るジレンマとして、どの自己啓発本『超スゴイ!俺の成功集』とか『マジパねえ!俺のありがたいお話』になるっていう弱点があるんですが……

この『道は開ける』はびっくりするほど徹底的な「帰納法」で書かれている。
もっと分かりやすく書くと、具体例の数がパない。本当にパない。
最後なんて怒涛の30人分具体例ラッシュ。

で、やっぱり演繹的な意味でも「論理的」。
例えば、物凄い不安に襲われた時、基本的には「起こらないから気にするな!」ってスタンスなんだけど、それが無理なときには次のステップを試せ、と書いてある。

1.最悪の場合どうなるのか考えること
2.最悪の事態を必要ならば受け入れる覚悟をすること
3.最悪の事態を改善すべく、落ち着いて時間と労力を注ぐこと

……という三段ステップは、覚えておく価値があると思う。
結構、即効性のあることもたくさん書いてる。

ってことで、この本に対して6割は僕、肯定的です

ここから残り4割書きまーす。


『7つの習慣』も『道は開ける』も、「聖域化」してるのか知らないけど、あまり悪い評判をネット上で聞かない。
……というか。そもそも、「こういう本を批判したがる人は、そもそもこういう本を手に取らない」が正しいのかもしれない。
僕は「読書マゾヒスト」ですし、「この世に読む価値のない本などほとんど存在せんのだ!」という立場なので、楽しくこういった本も読むわけです。

自己啓発ってフツーに読めば、読者が自分を変えるために読むものだと思うんだけど、「読み物」として、「エンタメ」として読んでも楽しかったりするんだよね。

おっと話がズレた。

で、『道は開ける』の何が良くないかっつーと……

『「KAROSHI」が世界中に広まっちゃってる、日本っていう国家』に「必ずしも」合わない考え方が多々含まれてる気がするんですよ。
二週間で鬱は治るとか言ってるんだぜ。いや、もちろん現代で定義された「うつ病」のイメージで言ってないのかもしれないけどさ。
この本を素直に受け入れるためには、日本の社会的闇の側面を見過ぎた。

あと「色んなところから」主張を集めてる分、よーく読んでみるとちょっとだけ「ブレて」る。
「リラックスが大事っすよ!(要約)」の直後に「死ぬ気で仕事に取り組んだから何とかなったんすよ!(要約)」って話が来たときはさすがに本気でビビった。

っつーか、極論だけど「こういう本が」「今の日本の長時間労働を生み出した」って言っても過言ではない……と言い切れるような……過言な……ような。

何度も言うように、「良い」本なんですよ。
例えば「『祈り』に効果がある」ことを非常に論理的に語ってたりする。宗教化の立場から、そして無宗教の立場から語る。これは正直、「おー素晴らしい」と思った。

だけどね、やっぱ「これ経営者が人を使うのに都合の良い本だよな~」って思っちゃったら、もうアウトっすね。

そういえば、僕はこの本が凄く好きなんだけど。

 

この本にそういう「嫌気」が無かったのは、「俺ら」が描写されてるからかな。
そう、『道は開ける』には「俺ら」がいないのだ。
「成功者」しか、いない。

またいつか再再再再読くらいしたときに『嫌われる勇気』の読書録も書くと思うけど……簡単に説明しておくと。
『嫌われる勇気』は「俺ら」と「哲学者」の会話という形態で話が進む。
……いや、もちろん実際は「俺ら」じゃなくて「悩む青年」なんだけど。

俺ら「んなわけねーだろアホか」
哲学者「(超冷静な論破)」
俺ら「死ね」
哲学者「(超冷静な論破)」

こんな感じで進むから、すっと入ってくるんだよね。
あ、実際の本はもっともっと冷静で論理的な議論してます。
滅茶苦茶熱苦しいけどね、この「悩む青年」が。

ついでに言えば、『道は開ける』は結局のところ「アメリカのテレビショッピング」なんですよ。
こんなこと指摘してるの、ネット上広しといえども僕くらいなんじゃないか?

「マイケル聞いてくれ。俺はこんなひどい状況で、もう動けないくらいだったんだ。だがな、この方法を使うことで、立ち直った挙句社長にまでなっちまったんだぜ!」……うん、我ながら酷い悪意だけど、だいたい具体例は全部こんな感じ。

もちろん、斜に構えて見過ぎな気もする。
あまり極端に斜に構えた見方は好きじゃない。
何やっても何が起こっても何を見ても悪い側面しか語らない、そういう語り方が僕は大嫌いです。

でもね、やっぱりこの本を「賛美」する気にはなれない。
何度も言うように、「良い本」なんだけどね。
特に「不安」には結構効くよ。


まあ、「一歩離れて」読む分にはオススメの本ですよ。
『嫌われる勇気』の方がオススメだけど……アレは毒薬にもなるからなぁ。

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